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March 2011

遠近法への壮大なる挑戦、それがプリキュアオールスターズ

Hibiki_2

まずは、今回の震災で被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。

私横浜に住んでるのですが、輪番停電の実施されている街は暗く、夜になると人通りもまばらですが、こういうときこそプリキュアの暖色系チームの出番なわけですよ!・・・というわけで『スイートプリキュア♪』の赤い方、「爪弾くは荒ぶる調べ!」でおなじみの北条響。歴代プリキュアの眉の太い方が好きですね私は。しかし、『プリキュアオールスターズ』は、頭身の違う歴代プリキュアが一堂に会するので、なんだか一瞬眩暈がするのですよw
#べ、べつに『夢喰いメリー』が休止だったんでおなか成分が足りなかったわけじゃないんだからねっ!(←自爆)

第1作『ふたりはプリキュア』が2004年2月に放映が開始されており、この2月から放映されている『スイートプリキュア♪』はシリーズ通算第8作にあたることを考えると、「プリキュア」シリーズがゼロ年代からネクスト・ディケイドにかけての女児向けアニメコンテンツとして引き受けてきた役割は非常に大きなものがあることが伺える(本ブログでもこの記事この記事で取り上げている)。しかし、「プリキュア」シリーズの前提となる90年代のこのカテゴリの主要コンテンツが、「美少女戦士セーラームーン」シリーズ(1992年3月~1997年2月)と「おジャ魔女どれみ」シリーズ(1999年2月~2003年1月)の2つの文脈を持っていることは、このシリーズの持つ性質の重層性を象徴的に示しているように思われる。
「プリキュア」シリーズの直接の参照系は、第1作のプロデューサー鷲尾天が「日本中の女の子を虜にした、大金字塔」であり「意識しなかったとすれば嘘になりますね」と率直に述べているように、「セーラームーン」シリーズであろう。この方向性に沿って、同じく第1作のシリーズディレクターの西尾大介は、その鷲尾の企画書にあった「女の子だって暴れたい」というキャッチコピーと、中国の武侠小説に出てくる女侠のカッコよさを組み合わせることを目指したという(『プリキュアぴあ』所収インタヴュー)。この方向から導かれる類型は、端的に(斎藤環の言うような)「戦闘美少女」であろう。一方、とりわけ「プリキュア」シリーズの中でも第3作の『ふたりはプリキュア Splash☆Star』と第7作の『ハートキャッチプリキュア!』には、「おジャ魔女どれみ」シリーズにより発展的に継承されている、東映アニメーションにより先鞭がつけられ、『魔法のプリンセスミンキーモモ』からスタジオぴえろの一連の作品によって構築された「魔法少女」類型の影響が濃いように思われる。
基本的に「戦闘美少女」の類型であるプリキュアシリーズにおいては、異世界から訪れる「妖精」(と呼ばれるマスコットキャラクター)がプリキュアに変身するための超自然的な力を少女たちに付与する、という構造が採られており、「魔法少女」ものにおいて、日常を変容させるファクターとして超自然的な力がアイテムを通じて「魔法」として顕現する、という側面はあまり強調されない。このことはあるいは、併行して放映されていた平成仮面ライダーシリーズ(『ふたりはプリキュア』は『仮面ライダー剣』と同時期である)が変身ヒーローとしての正義の多元性に絡め取られた結果として、勧善懲悪的なドラマトゥルギーがプリキュアシリーズに求められた、という皮肉な事態を反映しているのかもしれない。
しかし上述のように、プリキュアシリーズの中でも、『Splash☆Star』と『ハートキャッチ』には「魔法少女」類型に引き寄せられた側面がある程度看取される。前者については、シリーズディテクターの小村敏明が「『世界名作劇場』みたいな、家族を中心とした暖かい話がやりたかった」と述べており(前掲『プリキュアぴあ』)、このことがエヴリデイマジック(ローファンタジー)の構造を持つ「魔法少女」ものとの親和性を高めたようにも推測されるが(同作のモチーフが「精霊」であることも影響しているのかもしれない)、後者については、周知のようにスタッフ構成そのものに「おジャ魔女どれみ」との連続性がきわめて強い。すなわち、プリキュアシリーズは、基本的には「戦闘美少女」の構造を取りながら、間歇的に「魔法少女」類型へと接近する場合が見られるのである。とりわけ「魔法少女」的であった『ハートキャッチ』を踏まえて、『スイートプリキュア♪』がどのような構造を見せるかに注目したい・・・これは勿論、「魔法少女」類型を根源から揺るがそうとする『魔法少女まどか☆マギカ』とも密接に関連する問題である。

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