厚生労働省は一度ポン・デ・リングの成分表をチェックすべき
異世界からやってきた来訪者がミスドのドーナツ、特にポン・デ・リングに示す執着は異常なので、ひょっとしたら何かそういう成分が混入されてるのかなあ、と思ったものですから・・・というわけで、これもミスドにご執心の『夢喰いメリー』のメリー・ナイトメア。ああ、でもこの種の仕事が厚生労働省の管轄なのは『ジオブリーダーズ』の世界だけか?(『喰霊』だと環境省ですね)
オードリー・ビアズリーがオスカー・ワイルドの『サロメ』に寄せた挿絵は、世紀末イギリスの退廃を反映した作品として夙に有名であるが、その中に「stomach dance」と題された一枚がある。異国趣味に溢れたその作風から推すと、おそらくここで描かれているのはベリーダンスであると思われるが、ある展覧会の図録において、この絵にそのまま「腹踊り」との邦訳が附されていて妙な違和感を持ったことを記憶している。
表意文字としての日本語の持つ語感の中で、部首として「にくづき」を持つ漢字の語感には独特のダブル・バインドがあるように思われる・・・直裁に身体について指し示してしまうという「明瞭にされるべきもの」のベクトルと、その直裁さ故に含意される「秘匿されるべきもの」のベクトルの解離とでも言えようか。これはすなわち、我々が「身体性」を言語によって指し示そうとすること自体が孕む解離であるとも考えられる。
このことについて近時接した素材として、谷川流『涼宮ハルヒの憂鬱』の公式スピンオフ作品である、ぷよ『長門有希ちゃんの消失』を例示しよう。作中、ちょっとしたハプニングで長門の腹部を目撃することになったキョンに対して、この作品世界での長門は「私のお腹どうだった?」という「とんでもなく地雷臭がする質問」を投げかけているのである(1巻、33-34頁)。はたしてこの問いに正解はあるのだろうか。
個人的な感覚としては「お腹」の良し悪し、という質問は、まず一義的には「腹具合」の良し悪しに結びつく問いであり、そのフォルムや(狭義の)肉付きの良し悪しについての問いではないように思われる。それゆえこれは、スピンオフ作品たる『長門有希ちゃんの消失』版の長門の天然な部分と、なおかつ、作品世界自体が持っている微妙可笑し味を絶妙に表現したやりとりであると言えよう。この問いに対する、キョンの「いや特に問題ないんじゃないか?俺腹属性無いし・・・」(35頁)という応答もまた、その上滑りした部分も含めてよく出来ている。
しかし、ひょっとすると巷間では既に「腹属性」という概念が既に人口に膾炙したものであるという可能性も捨て切ることが出来ない。もしそうであるとすれば、「ツンデレ」類型と同じように、この概念によって多くの微細な価値観を持つ者たちの対話可能性を視野に入れることが出来る(勿論、微細な差異ゆえに分かり合えないこともあり得るが)・・・『よつばと!』の風香の肉がちょっと余ってるウェストと、『とある科学の超電磁砲』の佐天さんのいつも丈が足りないらしいセーラー服の上着について、識者が同じ概念で共に語り合う未来が、ここにはあるのかもしれない。
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