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エイヘアのプリンセス

Hime
てっきりクトゥルフ用語だとばかり思っていたのですが、火星の別名エイヘア(Aihai)が記されるC・A・スミスの作品はクトゥルフものに含まれていないのですね・・・土星の呼称サイクラノーシュとセットでおぼろげながら覚えていたのですが、どうりで用語辞典に載ってないわけだ(ちなみにこの名称が出てくる「ヨー・ボムビスの地下墓地」は『魔術師の帝国』に所収)。

イラストは、先だって2巻が刊行されたアキヨシカズタカ『双月巫女』からヒロインのヒメを描いてみたが(ちなみに特にプリンセスなわけではない(笑))、この作品が「SFスローライフコミック」と謳っていることに象徴されるように、火星はもはや懐古趣味的なガジェットとして機能する舞台装置となっているようである。もっとも、私の火星ものの原体験はおそらくブラッドベリの『火星年代記』なのだが、私が大学の学部時代に既にイアン・マクドナルドの『火星夜想曲』という良質のオマージュ(と呼んでいいのかわからないが)が出ていたことに鑑みると、「テラフォーミング後の火星」という舞台は、かなり早い段階から一つのジャンルとして成立していたのかもしれない。
もう1世代上になると(竹本泉のように)火星SFの原体験はバロウズやウェルズになるのだろうが、これらが比較的オプティミスティクな宇宙観に基づいていることに比すと、(勿論作家の個性の問題もあるだろうが)ブラッドベリの火星イメージに見られるペシミズムは、火星が比較的身近な舞台装置であったことの反映であるのかもしれない(光瀬龍の『東キャナル文書』などにも同じことが言えそうである)・・・フロンティアとしてはあまりに地球に近接している火星は、母星の将来がもはや単純な進歩史観(大きな物語)によって描くことが出来なくなったことをヴィヴィッドに受け止めることになったのではなかろうか。
#その意味では、近時の火星ものの代表である『ARIA』が、ある種突き抜けたオプティミズムを備えていることはなかなかに興味深い。

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